芝居をいろどる恋物語
上方和事の世界
和事とは、歌舞伎における演技の様式の一つです。 特に遊女などの女性に恋をした男の様子、 気の弱いどこかおかしみのある様子を、 やわらかな演技で表現することをさします。 和事によって演じられる恋物語を紹介します。
『けいせい染分総』 春好斎北洲 画 文政5年(1822)1月 中の芝居
初代 市川 鰕十郎 … 山形屋儀平 二代目 嵐 富三郎 … 娘おむめ
恋物語の主役たち
和事にかぎらず、芝居にはさまざまな恋愛模様がくり広げられ、 二人の絆の深さによって苦難を乗り越えていく姿が描かれます。 浮世絵には見つめ合う場面など、芝居の見せ場が写されています。 当時の役者達の演出も見どころです。
『菅原伝授手習鑑』 戯画堂芦ゆき 画 文政9年(186)3月 中の芝居

二代目 藤川 友吉 … 八重 三代目 尾上 菊五郎 … 桜丸
横恋慕する敵役
恋人達の邪魔をする、あるいは引き裂く敵役の存在が、 芝居に展開をもたらし、二人の仲を盛り上げます。 特に富や権力を行使してヒロインを手に入れようとする敵役は、 芝居の中でも重要な役どころをしめています。
『妹背山婦女庭訓』 春好 画 文化13年(1816)11月 角の芝居

涙をさそう悲しい結末
残念なことに、全ての恋物語がハッピーエンドを迎えるわけではありません。 相手をおもい身を引くことや、周囲の反対にあの世で結ばれようと心中へと至るなど、 互いを思いやるが故におこる悲劇は涙をさそいます。
『神霊矢口渡』 芳瀧 画 万延1年(1860)10月 天満の芝居

初代 中村 雀右衛門 … 渡し守頓兵衛 二代目 中村 翫雀 … 娘お舟 二代目 中村 仲助 … 下男六蔵